労働者の方が心身のいずれかに不調をきたし休職される場合、あるいは、回復に伴い復職を希望される場合、産業医による面談の必要性が発生します。一般に休・復職の判断は困難になることが多く、症状が緩解しないまま休職と復職を繰り返す事となり本人にとっても企業にとっても負の結果に陥りやすくなります。こうした事態を防ぐ為、復職については主治医の判断以外にもセカンドオピニオンとして別の心療内科の意見も仰ぎ適切な判断をすることが肝要です。
現在、休職に対する法的な規定はございません。企業の裁量にて、その間の給与等が決定されます。休職期間はその社員の今までの就業期間にて決定され、1カ月~3年程となることが多いです。これも就業規則によって異なるのですが、主治医判断だけ決定される場合、産業医との面談が必要とされる場合もございます。
次に復職に関してですが、これには非常に難しい問題が含まれております。休職案件を多く経験される担当者の方は、必ずと言ってよいほど復職に慎重になります。特に心の問題で休業している労働者の方は復職、休職を繰り返してしまう事が多くなる傾向があるからです。企業内で復職判断が統一されていないと、休職者に対して感情的になってしまったりするでしょう。企業・労働者双方の為にも、職場に復帰され、スムーズに業務が継続できるよう、休業の開始から通常業務復帰までのプロセスを前もって明示にしておく事が大切です。また、休職の経過をお互いに把握することも非常に重要であり、定期的な連絡、病状報告等は企業・労働者間での情報の齟齬を防ぎえるものであると考えます。
復職が可能であるかどうかを最終的に判断するのは本人です。復帰の際は本人の意思と主治医の証明が必要となります。企業側から復職を催促することは基本禁じられております。
そんな中、厚生労働省が作成した「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」をご参照いただくことは復帰支援に大きく役立つはずです。
復帰に関する重要なポイントを少し挙げさせていただきます。
- 診断書内の“復職可能”という判断を鵜吞みにすることは危険です。主治医は、患者からの情報をもとにして「病気の状態」と「生活の状態」から復職が可能であるかどうかを判断しております。就業内容や職場の環境・人間関係などの詳細・正確な情報収集ができていない場合が多いのですが、ある意味仕方がありません。企業側で、『診断書とはそういうものである』という認識を持っていただく事が、より良い判断を下せる助けになると考えます。
- 段階的に復職していただくにあたり、休職者の方をチェックすべきポイントがいくつかございます。まずが本人の仕事に対する意欲です。『仕事がやりたい!』という言葉が出てくるまで待つことが大事です。『ちょっとやる気がでてきた』ではまだ不十分な場合が多いです。次は生活のサイクルです。食事、外出などの活動量もチェックすべきです。記録も付けて貰い、互いに共有することで良いサイクルが掴めてきます。これには睡眠も含みまれます。睡眠時間、就寝・起床時間も安定することが望ましいです。これらに一定の効果が認められたら、次に通勤に移ります。通勤という行為が重い心的負担になっていることが多いので、通勤だけの為に会社に来ていただく練習をします。これもなるべく一定の時間に行います。最終は現場復帰です。企業側が求職者の方の職場環境をより適したものにしていただくことが、休職の再発を防ぐ重要なポイントとなります。本人・周囲からのヒアリングをしっかりと行い、休職が発生した原因が何かあるはずと考え、原因を除去・軽減することが双方にとって有益となります。