事業主は従業員に対し雇入れ時、および毎年1回(労働条件によっては半年に1回)の定期健康診断を定められた内容で実施する義務がございます。また、健康診断結果に伴い、労働者の健康に配慮する必要がある場合、業務の変更、就業場所の変更、残業を減少させるなどの措置を講じる必要性も生じてまいります。
さて、企業が実施する必要のある健康診断には
- 一般健康診断
- 特殊健康診断
の2種類がございます。
そのうち特殊健康診断とは以下の方に対し行われます。
- 有害業務に従事させる方、従事されていた方
- 歯に悪影響を与える業務に従事される方
細かくは
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
- 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
- ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
- 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
- 異常気圧下における業務
- さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
- 重量物の取扱い等重激な業務
- ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
- 坑内における業務
- 深夜業を含む業務
- 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
- ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに 準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
- 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
- その他厚生労働大臣が定める業務
これら特定業務に従事される方が特定健康診断の対象となります。
続きまして、雇入時の健康診断についてです。まず、職員を雇い入れた場合、下記の項目について、健康診断を行うことが会社に義務付けられています。
- 既往症及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無
- 身長、体重、腹囲、視力・聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
次は定期健康診断についてです。年に1度、前述の項目に関し、定期的な健康診断を行うことが義務付けられています。なお、以下の項目に関しては、医師が必要ないと認める場合には、省略が可能となります。
- 身長:20歳以上の場合
- 腹囲:40歳未満で35歳以外の者、BMI20未満の者
- 胸部エックス線検査:40歳未満で20,25,30,35歳以外の者、規定の業務に就いていない者
- 貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、心電図検査:45歳未満で35歳以外の者
対象者は正社員の方だけでなく、パートタイマーなどの非正規労働者の場合であっても健康診断義務を負う場合があります。
健康診断後の措置についてお伝えします。実施後、結果を放置しておいては効果がございません。判明した健康状態を、業務に反映していくことが本来の目的だからです。労働安全衛生法にて、健康診断を受診後、次のような措置を行う様、規定されています。
- 結果の記録
- 医師からの意見聴取
- 健康診断結果の本人への通知
- 医師による保健指導
- 医師による面接指導
企業には会社負担で健康診断を実施する義務があり、労働者は健康診断を受ける必要がございます。また、50人以上の労働者を雇用されている場合には、定期健康診断結果報告書の提出が義務付けられています。
健康診断を足掛かりに、自身の財産(健康)、企業の財産(従業員)を守りましょう。